もう1年半も前の冬。珍しく娘が一緒に出掛けるというので久しぶりに母娘でお出かけ。
青山にあるお店に婚約指輪のリフォームを相談しにいくつもりだった私に、当時流行だったパンケーキ屋さんに行きたかった娘が便乗した形で、普段誘いに滅多に乗らない出不精の娘が「行く」と言ったので内心びっくりしたのだけれど、クソ寒い冬にお一人様で青山くんだりまで出かけるのも億劫だったから、やっぱり何かしらのタイミングだったのかな。
娘の目的のお店はいわゆる裏原宿にあって、細い路地のそこここに行列が出来ていた。学生時代は頻繁に来ていた原宿界隈だけれど、流行のお店で60分待つくらいなら流行が廃れた頃に見物がてら行く位が丁度いいと思ってるアマノジャクなので、世の中の流行の縮図のような原宿の裏通りはちょっと居心地悪かったけれど、待つのも楽しとおしゃべりに花を咲かせている女の子たちや、無口なカップル、日曜仕様のお父さんと子供たちの笑顔を見て、時々はこんな場所に足を運ぶのもいいかもと思えてきた。
ふわふわでたっぷりとクリームの乗ったパンケーキは思いのほか胃に重く、12月の原宿は寒かったけれど腹ごなしに青山まで歩くことに。大体の位置は分かっていたので斜めに進めば昔のベルコモンズ辺りに行きつくだろうというカンだけで、裏通りを適当に進む。一歩入ってしまえば込み入った住宅地で人通りもなく、段々と自信がなくなってきたので立ち止まって地図を確認していると、前方から一人の男性が歩いてくるのが見えた。近視なのでぼやけたシルエットだったけれど、その人が段々と近づくにつれ私の頭の中でウル覚えな「四月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて」の一説がよぎる。
『4月のある晴れた朝、原宿の裏通りで「僕」は100パーセントの女の子とすれ違う。50メートルも先から「僕」には、彼女が100パーセントの女の子であることがちゃんとわかっていた。』
ガタの来た箪笥の引き出しを無理やり引っ張り出すような感じでこの一説を思い出し、原宿の裏通りで100%の男性が前から歩いてくるなんてまさかね~ないよね~とか考えたのだ。ついでに、私にとっては100%でも相手にとっては50%かも知れないし~とも(笑)いい年のおばさんでも頭をフル回転する機会があればこのくらい出来ちゃうんですね。
でも、次の瞬間私は凍りつく。目の悪い私でも鮮明に見えるところまで近づいた男性はまさしく「僕」だったのだから。ええと、私の100%の相手の方ではなく、100%の女の子と出会っちゃった方の「僕」です。厳密に言えば書いた方の「僕」
「えっ」と思った瞬間から隣を通り過ぎて後姿になるまで、きっと私の目はビックリマークよろしくなっていた事でしょう。「えっ」っと思って「まさかね」と思い「いかんいかん」と目を伏せたあと振り向いたら、既に通り過ぎた「僕」の後姿の斜め掛けメッセンジャーバッグのオレンジが目に飛び込んできました。
ナンノコッチャですよね、申し訳ありません。つまり某有名作家にまさかの遭遇だったって話なんです。場所的には確率は高そうですが、海外生活の方が長そうなので余程の幸運がなければ遭遇のチャンスなんてないんじゃ。。。
でね、何を言いたいのかと言えば、その時思ったんです。
私はデビュー作から●Q●4くらいまで予約してまで買って読んでいたほどのファンだったし大好きな作家さんで、現役ファンの方からしたら「げ・・うそでしょ?マジ?」と泣いて羨ましがられる状況を体験したというのに・・・
この運を他で使いたかった・・・・
運の在庫一掃だったらどうしよう・・・
哀しきかな、ヲタの独り言でした